大豆か小麦か その1

収穫した小麦の束

思えば、この10年ほどの時間にたくさんの試行錯誤があった。

ほとんどは失敗からのはじまりであり、はじめビギナーズラックでうまくいったりすることもあったとしても、どこかで失敗し、どうしたら良くなるかという試行錯誤の連続だった。過去形ではなく、今もその試行錯誤の中に在り、これからもずっとこの繰り返しなのだろう。かつて先覚たちが作り始めた稲作が長い歴史のなかで試行錯誤して現代稲作として今は存在しているが、将来の長い時間にわたってその方法が定着するということは多分ない。

稲づくりの歴史については祖父が体験したであろう技術革新とその前の手仕事の時代の経験そこまでしかわからないけど、それ以前の長い長い歴史を想像するだけで壮絶な歴史がある。僕にはそれを語る知識も経験もないので、小麦と大豆のことをちょろり。

秋田での僕の周囲には小麦栽培農家がいなかったので、最初のうち微塵も選択肢に入ることのなかった「小麦」。なんとなくのイメージで、十勝のカチンと凍る厳冬の寒さのイメージ、雪とは合わないような印象。そんなところで、敬遠していた。

反対に、地域の転作作物として割と古く(といっても数十年)から導入されてきたのが「大豆」。その大豆作の経験があるため近年では「枝豆」の産地化が盛んに行われている。

いずれも主食用作物として、重要品目であり、稲作の次に自給すべき作物としても取り入れたい作物。

「3haの水田を農薬・化学肥料を使わないで<不耕起・冬期湛水>で採る」
からはじまった僕の稲作は、5年後には規模を修正し
「1.5haの<不耕起・冬期湛水>田+1.5haの多品目無農薬栽培」
へと移行するに至った。

その理由は、全量自主販売としての販売力が伴わないことと、雑草に対する労力が殺人的で、やはり、今思い返してもこの転換は必要だったと感じるところだ。

水田の除草は本当に大変で、現在うちが持っている設備、能力では1.5haの除草におよそ40-60日は要する。3.0haもあれば3ヶ月も草取りしていることになる。(一人作業での換算で、実際に今年はほぼ一人。)

1.5haの転作田にどのような作物を選び、輪作体系をつくるか。そんなところからはじまった僕の水田利用転作について。

⚫︎大豆50アール〜70アール これは、祖父が使っていた播種機がたまたま蔵から出てきたことで、これならできると考え導入、中耕除草のタイミングひとつで無農薬栽培が可能だということがわかってきた。その後、マルチを施しての枝豆栽培も10〜30アールほど栽培したことがあるが、収穫と販売が間に合わず、害虫被害も多く中規模栽培は困難と判断

⚫︎ブルーベリーを20アール導入→その後25アールへ。しかしながら、粘土質の水田、排水不良の停滞水の影響で根腐れも多く、半分以上は植え替え、盛土してからの再移植とここでも試行錯誤中。

⚫︎かぼちゃ10アール〜20アール 面積をこなすにはかぼちゃが良いだろうと考えて試したが、無施肥ではあまり良いかぼちゃも取れず、現在最小限に縮小。

⚫︎無花果10アールほど 秋田でも割と容易に育てることができるいちじくを導入。当初、農協の指導のとおり3,4本仕立てにしていたが、降雪による被害があったことから、自然樹形での無施肥栽培に転換。カミキリ被害と相談中。

⚫︎トマト、ナス、ズッキーニ、ピーマン、バジル、オクラ、空芯菜、モロヘイヤ、里芋、ツルムラサキ、じゃがいも、ネギ、大根、玉ねぎ、にんじんなどを複合的に栽培し、野菜セットでの販売→畑deマルシェの開催などへ展開。夏野菜の需要は大きく、引き合いも強いためここ数年は頑張ってきたが、手間と収入が合わないので断念→現在キッチンファームとして消費者連携の形でみんなが自給野菜を作るコミュニティ畑として利用。

それぞれの作物で栽培上の課題、収穫後の乾燥・調整、保存、種採りなどの修正点が何層にも重なっていて、さらにその上にそれをどう販売するかという根本的な大きな課題がある。

大豆栽培については5年ほどの経験のなかで、除草剤を使用せずにもある程度栽培できることがわかってきたし、播種のタイミング、播種ピッチの修正、中耕のタイミング、収穫〜乾燥調整についても概ね、流れが構築できた。それでt単位の大豆が収穫できるようになってきたが、今度は、販売について頭を悩ませることになる。

選別機の上を踊る大豆

前項にも書いたように、家庭で大豆を使うという習慣があまりないため、大豆そのものの商品価値は薄く。多くは加工業者との取引きが必要になる品目だということがわかってきた。

しかしながら、大豆加工における国産大豆の使用率は、その圧倒的な価格差のために引き合いにならない。農協に委託販売している近所の大豆農家に値段を聞いたら、30kgで2,000-3,000円じゃないか?って言ってた。そのような価格状況で大豆のシェアは輸入が95%。外国産の安い大豆にかなう国産大豆の栽培が困難な状況。

でも、そんななかでもどうにかして蔵に収めた大豆を販売しなければならない。それが一昨年の冬に石孫本店さんへの味噌醸造を委託する経緯となった。

味噌について、詳しく書いていないので、また折を見て綴るとして…
http://tasogare.akita.jp/2018/11/11/たそがれの手塩にかけた味噌/

大豆そのものでも1〜2年は保存はできるけれど、徐々に水分は下がり、甘みも旨味も抜けていく印象がある。だから、鮮度が高い大豆ほど美味しい。

続く…