品種の選定と稲の生育について

<たそがれ通信2017秋より抜粋>

 これまではやはり根強いファンも多い「あきたこまち」の栽培を軸にしていたのですが、自家採種による種取りを繰り返し、栽培上の特性も把握できてくると、「あきたこまち」は無施肥ではとても生育が弱いということがわかるようになってきました。これはおそらく近代農業に移行する過程で、「多肥栽培において倒伏しずらい、多収品種を」というニーズに応えるため開発された品種であるからだろうと僕は思います。

不耕起栽培では、農薬はもちろんのこと、肥料の施肥も一切行っておりませんので、無肥料型による栽培体系の構築が求められます。そのうえで、「あきたこまちの栽培特性」は僕の栽培の型にはあまり合わない品種だなと感じるようになりました。


 おそらくあきたこまちだけを栽培しているとこの特性はわからなかったのだろうと思いますが、全く同じようにして栽培してきた「ササニシキ」の分蘖(ぶんけつ)力は抜群で、無施肥型でも初期生育の確保が早く、他の水田雑草が茂ってくる前にある程度の体づくりができます。そのため、除草についても「あきたこまち」よりも手がかからないという特性を発見し、しかも収量についても年々良くなっている感じがします。ササニシキの収量はこの3年ほどで6~7.5俵にまで向上してきました。


 草負けしない田んぼになると、稲の生育環境が向上し、水田そのものの環境が改善してくるようになります。不耕起栽培に転換した頃は悪循環に陥っていた環境も徐々に本来の力を取り戻しはじめたような感じがしています。ですが、まだまだ除草管理、配水管理などの課題はたくさんあります。


 コシヒカリともち米として採用しているコガネモチもササニシキと同程度の生育力があり、あきたこまちに比べると非常に育てやすいと感じています。そのため、食味値の優先というよりむしろ、無肥料栽培に適した品種の選定という基準で品種を選ぶようになってきています。乾燥についても高水分のお米は年内消費用とし、十分に乾燥したものは年明け後も保管できるような調整をしています。


 まずは新米用としてご用意したのは「あきたこまち」と「ササニシキ」です。先にお伝えさせていただいた通り、あきたこまちは今年から栽培面積を減らしていますので、すぐになくなってしまいそうな状況です。ササニシキは、かつては東の横綱とされた品種ですが、今は宮城県以外のものはほとんど見られないほどなくなってしまったお米で、あっさりとした口当たりで飽きのこない食べやすさがとても気に入っています。今年はこのササニシキと来春からはコシヒカリをお届けしていく予定ですので、そうぞよろしくお願いいたします。