海のいのちをいただく

八峰町八森の漁師で、玄辰但馬丸 船長の山本太志(たかし)さんが、先月から男鹿沖までハタハタ漁に来ているとのことで、選別作業を募集されていました。

漁師さんの仕事はほとんど見たことがないし、やったこともないので、こどもたちに聞いてみたら「行きたい!」と即答。太志さんに連絡を取って週末にお手伝いに行けたらと考えていたのですが、ちょうど金曜までで岸に寄せる季節ハタハタ漁が始まったとのことで、沖での漁がそこまで、となったそうでした。

残念ながら予定していたハタハタの選別作業の手伝いには行くことができなかったのですが、軌を一にして太志さんの元へ訪れていた国重咲季(元AIU生でたそがれにも頻繁に来てくれている、一度都市部に就職するも秋田にIターン中)ちゃんが大量のハタハタを持ち帰って我が家にまで届けてくれました。

よくこどもの頃からばあちゃんが裏口でハタハタをさばいたり、鳥をしめたりしているのをこっそり覗いたりしてきましたが、まさか自分がこうして同じことをしかもこどもたちとするようになるとは思ってもみませんでした。

昨年も同じように大量のハタハタをいただいていたので、心の準備はできていました。ハタハタが届いた日には家族総出で「仕込む」のです。秋田では。

うろこがなくて、体の表面に独特のぬめりのある魚。内臓も少ないのか小さくて、臭みが少ないのもすしや三五八漬けとして保存食とされてきたこともうなづけます。

トロ箱一杯ゆうに30kgオーバーのこのハタハタを痛めることなく適切な処理をして冬季の保存食とすることが今夜の課題。

まず、こどもたちが、うちにあるまな板と包丁を取り出して、頭と尻尾を落とします。エラが指先にささって痛いというので、軍手をはいたらどうかと提案してみたら、至極適切だとのこと。

それを見ていた長男がおもむろに近づいてきて、なんと手にはおもちゃのまな板と包丁。それから義母が作ってくれた布メバルを切る仕草をはじめているじゃないですか。

手がハタハタのとろとろでてんやわんやの中、必死にカメラに収めました。

写真のボウルでたしか6杯分ほどを、家族6人、力を合わせて3時間ほどですべて処理しました。ほんとはハタハタ寿しや三五八も好きですが、調味料も材料不足だったため、手持ちのたそがれ塩麹、醤油麹、ハーブ塩などをまぶして、一食分の量に小分けして冷凍。

そんな太志さんが添えてくれたメッセージ
「生きとし生ける物を授かって生きる。
中略
 
人間は自然には敵いません。その事実を分かっていない方がなんと多い事か…
こうして頂いた命を大切にして下さる事に心から感謝致します。

大漁、不漁あれど、海の神様が判断した事ですから私達は従うのみです。
その恵みをご堪能ください。」

まったく労せず、苦せずでいただいてしまった海の命。この恩はいつか野菜や農産物で返したいという思いを強くしつつ、まずは無駄にせずに迅速な処理をこどもたちとも一緒にできたことに胸をなでおろしています。

太志さんは以前、ハタハタの活魚にも挑戦していると言って、養殖中の「活ハタハタ」も持たせてくれたことがありました。生のブリコに魚卵を醤油に浸けた瞬間、固まって個体に。刺身で食べると旨い。と教えてもらいました。

そんな漁師の山本太志さんやご家族、海への思いを馳せながらいただいた超鮮度の海の恵みは格別でした。寒い冬を乗り越える準備も少しずつ整いつつあります。

オールたそがれ産の蒸し野菜を彩りに添えて。