聖園短大での聖園ふるさと教育とおむすびワーク

先週のことになりますが、秋田市にある聖園短大での特別授業枠に呼んでいただきトークとおむすびワークをしてきました。

参加してくれたのは2年生が80名ほど、自由参加の枠だったのですが多くの学生さんたちが聞きにきてくれて嬉しかったです。大半が女子生徒でしたが、一握りの男子学生の姿もありました。

聖園短大には保育を学ぶ学科があり、卒業生の9割は保育士などの資格を取って保育業務に携わる仕事に就くのだそうです。いずれ母親・父親となって子育てをしていく若い世代に向けて、何を伝えたら良いかという自分の中での課題もありまいた。

農的暮らしを営む上での学びの要素は、計り知れないほど多岐に渡ります。その全般を伝えることは時間の都合上、難しいかなと思い、今回はうちで取り組んでいるたそがれ野育園の活動を中心に、子育ちや食、食と農をつなぐ田畑や自然活動について紹介しました。テーマは「生きものも人も育ちあう たそがれ野育園」。

狙い通りに子どもたちが躍動的に田畑で活動している様子や野草や野菜を使ったお料理、ワークショップなどの写真にいちいち反応してくれる生徒たちに こっちの緊張もほぐしていただきました。

要点として伝えたかったことは、子どもたちは食を選択する術を持たないのだからこそ、その子らを守る立場の大人は、食のことを強く意識して臨んで欲しいということでした。

あとで考えたのですが、もともとこの野育(のいく)という取り組みは、農園経営のひとつとしてではなく、保育園・幼稚園に子育てを依頼するという従来の子育て論へのオルタナティブとして、自らが引き受けた百姓業のひとつだということを伝えたほうが良かったのかもと思いました。そこは僕が大学に対して幾許かの忖度があったのかもしれません。こどもたちが鶏をしめる写真も使いませんでした。

なので、かなりマイルドな内容になったんじゃないかなと思っています。

1班と2班に分かれてこのトークの前後に、おむすびを結んでいただくワークも行いました。ここはいつもお世話になっているフリー栄養士の畠山澄(MAMANI)さんにもヘルプをいただいて、たくさんの学生さんたちがスムーズに作業できるように進行していただきました。

澄さんのおはなしで面白かったのが「手塩」のこと。「三本の指でつまんだ塩を手のひらの上で何回か揉むように回して、周りの人の塩と味比べしてみてください。人によって塩の味が変わります。」一同が「え〜!!!」とどよめき、盛り上がります。

当初はサランラップの上でおむすびをむすんだら良いんじゃないかという流れだったのですが、できることなら素手でやりたい!と提案してくれたのも澄さんでした。ほんと、ヘルプをお願いして良かったな〜と終わってからも感謝の気持ちでいっぱいです。

おむすびだけではもったいない。お味噌汁も飲んでもらおうということで、考えたのが簡単味噌汁の「味噌とき」でした。

たそがれの米と大豆使用の米麹味噌と玄米麹味噌を用意して、すり鉢であたります。(ここは事前準備)あとは、お好みの調合でお湯を加えるだけ。お好みでネギのトッピングも。

ここでは、味噌は沸かさずに最後に溶くだけ。これだけで麹菌を死滅させずに直接、摂取できるということや時間がないときはこれだけでもミネラル補給ができること。もし物足りなければ市販のだし粉や少量の植物油を加えるのも良いと、澄さんの栄養トークが随所にちりばめられていました。

ササニシキの新米のおむすびを噛みしめる生徒たち。中には「やったことない!」声も聞こえてきたのですが、簡単でも心も体も和む食事の取り方。そのシンプルなものづくりの中にこそ、大切なものが詰まっているんじゃないかなと改めて思いました。

生徒の皆さんが、来春には保育業務に就き、こどもたちの保育者となることを想像すれば、こうした時間はもっともっと必要なことなんじゃないかなと感じました。

こうした機会を与えてくださった聖園短大のスタッフの皆様、事務局の皆様、参加してくれた生徒のみなさん、本当にありがとうございます。

おむすびのお代わりが続出、味噌汁もリピーター続出。あちこちから「美味しい!」の声が飛び交って、僕たちにとってはこの上ない時間をいただきました。中には「このネギが美味しい」と言ってくださる方もいて、それはそれは嬉しかったです。”ねギラー”もやはりいましたね。

未来のこどもたちにとって僕たちができること、それは自分たちがこの食を楽しむ時間をあたため、そして地域の自然や生産環境が持続していくことではないかと考えます。

そのことを共有して、これからまたみんなで食と農を結ぶ道を切り開いて行けたら良いな。

<追記> 参加してくれた生徒さんたちからの感想まとめです。

⚫︎講演を聞いて

・たそがれ野育園に行ってみたい/保育者になって担当の子どもたちと体験しに行きたい/自分の子どもが出来たら一緒に参加したい/帰郷したら参加してみたい。
・作物を作る経験に興味がわいた。
・いぶりがっこを小屋から作るなど様々なチャレンジにすごいな、楽しそうだなと思った。
・実家が山の中なので野育園とほぼ同じような場所で育ったので懐かしかった。来年から実家に戻るのでもっと田んぼや畑を手伝いたい。
・自分の子が生まれたら元気いっぱい山で育てたい。
・自然と深くかかわった豊かな生活に秋田の良さを感じた。たくさん自然と関わる活動を保育に取り入れたい。自分自身も経験したい。
・私の家でも農業を営んでいるので自然には触れてきた方だと思っていたが、野育園での子どもたちはより自然を体感していてうらやましい。
・県外からも秋田の自然体験に惹かれて参加する人がいる活動を初めて知った。わたしも1年間の体験をしてみたい。
・秋田の良さをたくさんの人に伝えていることはとても嬉しい。
・自然の中で生きる素晴らしさに気がつきました。
・こんなに伸び伸びとした子育ての仕方と自然体験の方法があることを知った。のびのびと遊び、自然に教えてもらい、誰よりも多くのことを学んでいて良い環境がうらやましい。
・自分は未体験なので、小さい頃から田植えを経験している子どもはとてもうらやましい。
・自分では自然と生きる暮らしに触れることがなかったので貴重なお話を聞けた。
・外で遊ぶ機会が少なくなってきているので、この環境は貴重で守らなければならない。
・野育園を秋田の外にも発信していきたい。
・自然と共に生き、自然に生かされていることを実感できる場所。
・季節ごとに自然の中で様々な経験ができるのがうらやましい。
・自分の地元も自然が豊かなので大事にしていきたい。
・講話に出てきた子どもたちが伸び伸びと自然での遊びや作業に取り組んでいる様子が、見ているだけで楽しく感じた。
・生きものも大切にしながら食物を育てる意味を学んだ。ふるさとの自然を大切にしながら自分たちで育てて収穫する楽しさ、食べものを大切にする心を育てることができる。その姿がとても素敵。子どもたちの心も身体も健康になると思う。
・写真で見たお野菜もぜんぶ美味しそう。
・家族だけでなく参加者が共通の目的に向かって作り上げる楽しさを味わうことで、人とのつながりができる。
・田植えや稲刈り体験だけでなく、1年を通して見ることが大切。雑草抜きも大切。
・子どもにとって野菜作りは野菜を食べてみる、美味しく感じるきっかけになる。大人も楽しみながらともに作業することで野菜や自然に対する愛着や好奇心をくすぐられ、心身の成長につながる素敵な教育。
・育てた作物での料理も工夫されていて驚いた。協力して自分たちで一からつくるのがとてもいい。
・自然の中での開放感と自由な感じが好きなので、改めて良さを知ってよかった。自然を生かすのは人間次第なのでもっと環境について考えていきたい。
・地域をよりすてきな所にしていくためにはどのようなことができるのかを、私も自分なりに考えていきたい。
・地域の楽しみが増え、子どもたちも自然を感じて育つことが出来、素晴らしいこと。
・保育者になったら子どもたちと野草探しをして料理して食べてみたい。
・横手市や湯沢市といった地元の市名が出てきて身近に感じた。
・父も農家であきたこまちやスイカを作っているのでとても大変なことは知っているが、父も菊地さんも楽しんで農業をしているところが共通。
・「自然を守る=環境を破壊しない」だと思っていたが、食においても自然環境を守ることが出来る、生き物に感謝することをすごく考えさせられた。
・無農薬でつくられる野菜や米は本来の味が出ている。
・美味しそうな野菜と料理の写真にとても幸せな気分。
・農業が楽しそうだと思った。自分で作ったものを食べたらどんなに美味しく思うだろう。
・農業高校で米や野菜作りをしたが、深く考えながらではなかった。
・いろいろな角度から物事を見ることの大切さを知った。
・写真の方々がみんな笑顔で胸打たれる。
・子どものため、人々のため、伝統継承のために活動していらっしゃる方がいることを忘れずに、自分の保育を見失わずに努力して生きたい。
・「利益より幸せを求めていく」「生きるのに困ったらみんなで支え合う」という言葉が心に残った。

⚫︎おむすびワークを通して

・お米とても美味しかった。お味噌つけて食べたらもっと美味しかった。感動した。
・味噌だけお湯で溶く味噌汁は初めてだったのでよい経験。
・最初はお米の違いなど分からないと思っていたが、普段食べているお米より美味しい。
・家で作っているお米より美味しい。
・麹の種類が違うだけでお味噌の味が違っておいしかった。二つの味噌を混ぜたり割合を変えたりして楽しめた。
・簡単な作業でもとても楽しかった。
・塩を手ですりつぶすとその人なりの味になることを初めて知った。驚いた。面白い。
・自分の手で作ったおむすびに、いつもとは違う楽しみ方ができた。
・味噌と塩だけでこんなに味があって美味しいことを学んだ。素材の味を感じることができた。また食べたい。
・初めて無農薬のおにぎりを食べた。もちもちした食感と甘み。
・今日の体験でこれから一人暮らしをしても毎日みそ汁を食べようと決めた。野菜も育ててみたい。
・味噌を合せたらさらにうまみが出るという食の面白さを感じた。
・いつもと違うお味噌汁の味に驚き、味噌によって味が変わることに面白さ。
・普段料理をしないため、とても新鮮な経験。握り加減や味噌の濃さなど調整が難しくて何度もやり直したが、自分だけのおにぎりと味噌汁ができて嬉しい。
・子どもからお年寄りまで愛される味。
・コメ一粒一粒がとてもはっきりしていて、調度良い粘り強さがあってまた食べたい。
・お味噌は温かい気持ちになる味。
・今日のワークを家でもやってみたい。
・グループのみんなと楽しく作ることが出来てとても楽しかった。よい思い出にもなった。
・お弁当を食べた後でも、今まで食べた中で一番おいしいおにぎりとお味噌汁に感動した。
・今まで食べた米の中で一番おいしかった。それは菊地さん一家が愛情を注いでいるから。私が先生になったら、この美味しさを子どもたちにも味わってほしい。
・愛情込めて育てたお米のおむすび、食べるのがもったいないくらいだけれど、これまでで一番美味しかった。
・白米単体で食べることがなかなかないので、より美味しさを感じた。
・味噌焼きおにぎり食べたかった。

⚫︎講師陣とプログラム全体について

・「食」は「人を良くする」と書く、とお話されていて本当に人を豊かにすると感じた。食を大切にして、子どもたちにも伝えたい。今日学んだことを生かしたい。
・地球温暖化は異常気象が食物にも影響するので人類の未来と深く関わっている。秋田は今まで何もないと思っていたが、食についてみんなで考え、手を取り合えば未来を守っていける。
・子どもたちにも食と自然の大切さを伝えていきたい。
・秋田で保育士として働く人間として、子どもたちと自然をつなげて行けるように環境構成や農業体験など様々な方法を考えていきたい。
・自分たちが気づいていないだけで、都会に負けないぐらい魅力的なものが秋田にもあるのだと教えていただいて嬉しかった。
・自分の食べ物を自分で作ることは、より自然と関わり食について考えるきっかけ。
・「灯台下暗し」で、秋田を出てみると秋田の良さに気付くのか。
・無農薬で農業を行うことで生き物が集まり、美味しいお米ができることを初めて知った。
・“秋田の自然”が美味しい“食”につながっている。
・県外に行く前に秋田の良さを知ることが出来て良かった。
・とても美味しいおにぎりを食べて、手間をかけて食物を育てることの意味を知った!
・今度はジャム作りを体験してみたい。
・菊地さんの作ったいぶりがっこ食べたい。
・食事からつながる思いも、お話やお腹で感じることが出来て楽しい時間だった。
・自然の力だけでこんなに美味しいものが作れることに驚き。講演の様々な収穫の写真を見て、こんなに多くの自然を食べているところが魅力的。
・手で握って作るおむすびと米麹のお味噌汁が本当に美味しかった。講演を聞いて食材のありがたみが深まりました。
・普段塩むすびを作ることはないので、塩の美味しさやお米の食感や味を感じられた。
・秋田の魅力をたくさん感じることができたので、この魅力が広まればよいなあ。
・普段なんとなく「美味しい」と感じている食べ物も、秋田ならではの美味しさと思うと幸せに思った。
・短時間で食の大切さを改めて感じた。
・参加して良かった。
・授業でも野菜を育てたり実習を受けたりしっかりと食育を学んだつもりだったが、一部でしかないと実感した。
・たそがれ野育園のどの方も優しく温かい雰囲気。しっかり信念を持っていらっしゃるから自然と人が集まり支え合える素敵な環境と仕事をすることができる。
・最後の最後まで充実した時間/熱意と愛情のある時間をありがとうございました。
・また来てください!!
・ありがとうございます!!
・ごちそうさまでした!!