味噌を作るのなら、大豆を育てることからはじめると良い。

わたしたちが行っているたそがれ野育園・キッチンファームでは、参加するメンバーが少しでも自給体験ができるように、種まきから栽培、除草などの管理、収穫、種採り、片付けなどを一貫して学ぶことのできる「農的暮らしの学び場」づくりを行ってきました。

昨年2019年の参加者は約20組60名で、約25aほどの農地をキッチンファームのフィールドとして利用しました。栽培した作物は、じゃがいも、トマト、ナス、ズッキーニ、オクラ、空芯菜、ホーリーバジル、スイートバジル、アマランサス、ネギ、大根、枝豆、里芋、ベビーリーフなど30品目50品種ほど。沼山大根のいぶりがっこもこうして栽培から燻し、漬け込み工程までをみなでこなしました。

コチラは去年の春から秋のキッチンファームでの作物栽培の様子。

いよいよ冬も終わりとなり今季の作業プログラムも『味噌づくり』で最終回を迎えます。「キッチンファーム」と名付けたのは、普段はキッチンから遠い存在であるファームを直結したい。ファームからダイレクトにキッチンとつながる。そんな畑作りのありようをイメージしたからです。

ズッキーニって毛が生えてるのか!オクラって生で食べても美味しい、じゃがいもまずい!小豆って宝石みたい。トマト美味しい。野菜大好き!!

こんなこどもたちの声が飛び交う生産現場は嬉しいものです。

また、夏場は野菜が豊富にあるけれど厳冬期には青物がなくなる秋田では、保存食づくりも欠かせません。保存食と呼べるかどうかは別として、採れたてのトマトでケチャップをつくったり、笹巻き、大根のいぶりがっこ、杵つき餅など農産物を無駄にせず美味しくいただく加工食ワークも数多くこなしてきました。

今回は、そんなキッチンファームの一年の最後を飾る味噌づくり。

もちろん、大豆は種から育てて自ら収穫した栽培もの。昨年11月のお天気の良い日に刈り取り、枝のまま乾燥してから脱穀。脱穀はもちろん無動力の足踏み脱穀機と唐箕。

大豆の収穫

約6aほどの面積に畝の数が10本。これで100kgほどの大豆が収穫できました。これを20組で分けて一組あたりの取り分が5kg。写真下のように未選別です。各自この状態で持ち帰ってもらい、選別は自主課題としました。

自分たちが育てた作物である以上、虫食いの豆すらもったいないと思ってもらえると考えています。選別した参加者の方から、「はじいた豆はどうしたら良いのか?」というような問い合わせが来ると嬉しいものです。僕も同じ道を通ってきましたから。

味噌づくりの場合は、ある程度の欠けや色むらのある豆は使用しても良いと考えています。虫食いは抵抗がある人も多いと思うのでおすすめしません。あとは、クズ大豆として発酵肥料の原料とするか、ほかに利用の仕方がないか考える。そこが重要だと思います。

5kgの大豆を我が家のレシピで仕込むと約20kgの味噌になります。全量を使っても良いし、大豆をほかに使用したい方はその分を残して味噌にします。

これまで味噌づくりに重要なのは塩と麹だろうと考えてきて、麹は農薬・化学肥料ん被曝していない米、塩はできるだけミネラル分を含んだ自然塩(精製塩ではなく)を基本としてきたのですが、最近は水も不可欠だろうと思うようになりました。大豆を一昼夜水に浸しておくと原料の2倍強に膨らみますよね。原料大豆と同量の水がこの時大豆に貯えられるということになります。

なので今回は、できるだけ湧き水などの天然水の利用、なければミネラルウォーター、あるいは蘇生水の使用をおすすめしました。

うちにある外のかまどは二つ。かまどといってもマキストーブとぬかくどです。いつもこれでご飯を炊き、もち米を蒸し、味噌豆を 煮ています。草木染めなどもできます。

昨年、甑(こしき)で煮るではなく蒸したら早いし甘味も残るという成果があったので、今年は蒸し豆も採用しています。一度に投入できる大豆が最大で15kgほどなので、だいたい3組ほどを定員として4回転行います。

しっかり火の通ったところを見極めて手際よく火からおろし、すぐに専用ミンサーですりつぶします。その前に麹を塩きりしておきます。

何年も続けているうちに参加者の手際がよくなっていることに嬉しくなります。こちらの段取り力が上がってきているのかもしれません。

ほとんど、何も言わずとも、それぞれが助け合いながら小気味よく進んでいきます。園主は道具を準備するだけ。こどもたちも何やら楽しげな雰囲気に近寄ってきました。

大豆が潰れたらいよいよ混ぜます。ここは花形の作業になりますが、大事なのは大豆を煮ること、その前の浸水、そして大豆を種から育てることです。

お母さんが作る味噌、お父さんが作る味噌、こどもたちも手がけた味噌。どれもそれぞれのご家族の愛情たっぷりの味噌になることは間違い無いでしょう。

仕上げは人によっていろんな流儀があると思いますが、表面を磨いて酒粕綴じで。

仕込みが終わったら、野育園恒例の持ち寄りぬかくどランチ。今回はぬかくどを大豆に使用したので無水鍋で炊きました。畑に雪中保存した沼山大根を掘り起こして竜田揚げに。先日樽上げしたいぶりがっこ。手前味噌の味噌汁。

おまけにみちるが空いたせいろで米粉の蒸しパン風のおやつを出したら好評で、今度は米粉料理のワークをやろう!ということになりました。

さて、味噌仕込みもできて心も体もほくほくしてきたところでこの冬も終わりです。

次回投稿では、2020年度のたそがれ野育園・キッチンファームのプログラムや説明会のご案内をしたいと思っております。また今年もたくさんの仲間とともに田に畑に喜びをそして胃袋をシェアできることを心待ちにしております。