入学を機に国際教養大にきた若者たちが映像会社を立ち上げ、県外、秋田で起業することになりました。彼らが映像制作会社アウトクロップを立ち上げるきっかけとなったのは、短編映像作品「沼山からの贈り物」を作り上げたことだったと回想します。この度、この映像発表をするという機会に立ち会わせていただくことになりました。
在学中に秋田市川辺に住む遠山桂太郎さんから「沼山大根」の存在を知ることになった彼らは、田口康平君(T-farm)やたそがれ菊地の手掛ける「沼山大根」を詳しく知りたいと農業試験場や、かつて沼山大根が栽培されていた横手市沼山地区などへの取材を1年間に積み重ね、約27分の映像作品として完成させました。
その上映会のためにトライしたクラウドファンディングの目標金額¥100万を見事達成させ、支援者への返礼品として沼山大根をお届けしたり、全国各地での映像上映会を自分たちの手でプロデュースすることに。
初回は、栗原エミル君の出身地である京都での開催の予定でしたが、コロナの影響下ということもあり、急遽オンライン上映会に変更。実際に沼山大根を食べてもらう事は残念ながらできなかったそうですが、おかげで僕ら生産メンバーもこの機会に参加させていただくこととなり、遠方から映像を見ていただいた方々とオンライン上で交流させていただく機会をいただきました。
一本の大根がこうして大きな広がりを見せてくれるということにとても興奮しました。
その後、和歌山での上映会を経て、会場を秋田県各地に移し、県内上映会リレーへと展開。
UGO-HUBさん(羽後町)
TOMOSU-CAFEさん(男鹿市 )
やぶ前(三郷町)
亀の町ストア(秋田市)
交点(秋田市)
あつかましくも、県内の全ての会場に参加させていただくこととなり、たくさんの方々と沼山大根を通して触れ合う機会をいただきました。各回ともに沼山大根メインに美味しく調理してくださるシェフの方とそのお料理が素晴らしくて、大根ひとつからでも料理が考案されるのかと鮮烈な印象を抱きました。
いずれの会場も、若者や移住者が拠点として整備してきた魅力的なスペースで、アウトクロップの2人がつくりあげたこの映像を見て楽しんでもらうこととともに、意見交換や今後の展開などを様々な角度から考察することができました。
この上映会に際して、五感を通して、体験してもらいたかったのだと話す映像監督の松本隆慈トラヴィス君のいう通り、映像を目で楽しみ、沼山大根のお料理を味覚と嗅覚で味わい、主題歌を書き下ろした同じく教養大の同級生でもある黒崎平君の弾き語りを耳で味わいながら、それぞれの視聴者が感じた感覚を手触りで楽しむ。得難い体験をさせていただいたとともに、これからの未来をともに考える若い存在の誕生に幾度となく心が震えました。
このリレー上映会を通して僕に浮かんできたビジョンは、主流メディアや大きな潮流としてまだ現れていない地域に眠る小さな湧水のような存在はもうすでにそこにあって、
彼らが描いてくれたこの「沼山大根」のストーリーのように、地域や固有のコニュニティの各地に無数の可能性が、にわかにその輪郭を現し始めている。
コロナ禍が産んだもうひとつのストーリー、それは新しい暮らしを求める若い世代の誕生と懐かしい未来を想像する僕ら自身の物語かもしれないですよね。