現代の機械的な稲刈りでは、コンバインで稲刈りをすれば田仕事もほとんど終わったようなものですが、動力に頼らない野育園のたんぼでは稲刈りを終えてからが本番です。
刈り取ったイネをホニョ杭と呼ばれる棒掛け乾燥して約2週間。天候や前後の仕事の関係をはかりながら、脱穀工程へと以降します。
今年は比較的雨も少なく、ほとんど予定していた通りの日程で作業ができました。この時期は台風の接近などで天候も不順になることが多く、刈り取りが終わったからといって落ち着いている暇がありません。
脱穀機が1台、唐箕が1台しかないので、みなさんの脱穀はそれぞれ都合のつく日程で作業を行っていきます。
たんぼから稲束を運ぶこどもたち、足踏み脱穀は土で汚れることもないので、こどもたちも楽しめるしごとになります。
扱いた籾は大きなワラくずなどを取り除いて風選をかけます。唐箕から出てくる一番籾を見てハッと喜ぶみなさんの姿を見るのが好きです。
籾までの選別ができたら、たんぼの片付け。杭を抜いて、押切でワラを細かく切って、それをたんぼに還します。その上に米糠を戻して、たんぼへのお礼と来年への土づくり。うちのわんこちゃんたちもこの時を待っていたとばかりに米糠を舐めにきます。ワラの一部は冬期間にしめ飾りを作ったり、縄ないワークや手しごとの材料にするためにわらしべを取り除いたり、叩いたり、ミゴを集めたり用途によって選り分けておくことにします。
いよいよ袋に入った籾は、籾すりだけは機械的に済ませて玄米にし、それぞれが育てたお米として持ち帰ります。1区画(約10m2)で5kgの玄米。2年目、3年目になると15kg、30kgのお米を持ち帰る家族も出てきました。
少しずつ、みんながたんぼに関わり、イネの一生と向かい合い、土と関わる。この一年を通じて、食べ物の成り立ちについてともに考え、ときに苦しい作業も笑いあってやり過ごす。
お米を受け取った瞬間は、いつもみなさん体の底から湧き上がってくるような笑みがこぼれているようです。今年も大変なたんぼ通いご苦労様。
その新米の味は何物にも比較できない格別のご飯の味となるだろうと思います。
そんな野育園の脱穀作業を少しだけ手伝いながら、僕は僕で機械の稲刈りを粛々とすすめることになります。