2020年春から夏のまとめその2(続水稲編)

前回の続きになります。

5月末に田植えをして6月、7月、そして8月もここまで約2ヶ月の間、ほぼ毎日田んぼの雑草との生存合戦を繰り広げていました。他にも大豆やキッチンファームの野菜、小麦の収穫などもありますが、そのことについてはまた次の機会に。

最近の写真がないのでちょっと古い写真を使って説明します。

エンジン式除草機

うちの田んぼの除草は、ほぼこのエンジン除草機がメインとなります。すぐ目の前にエンジンがあるので高音と爪が土を掻いて飛んでくる泥で体中がグチャグシャになります。ご覧の通り、田植え機と同じ方向を歩くのでこの通路部(条間と呼びます)の雑草は、ほぼ完全にこれで除去することが可能です。

稲の生育ステージ、雑草発生のタイミングに合わせて何度もこの作業を繰り返します。うちの田んぼの広さは10間×30間(18m×54m)が基本なので、この0.9mの機会を10往復するのに大体1時間くらいかかります。雑草の発生状況にもよりますが、右寄せ(あるいは左寄せ)で歩いて、往復で株際ギリギリまで責めることもあります。頑張れば5反(5枚分)ぐらいを一日でできますが、次の日へのダメージも多いのでせいぜい2,3枚程度にしています。

竹箒除草機

田植え直後の1週間以内に雑草種子が発芽するので、その初期段階で草を打つ戦略として、チェーン除草や竹箒除草、最近ではY’S weeder というような初期除草機を使用したこともありますが、どうも効果が得られている感触がなく、最近は労力短縮のために、一発目からエンジン除草機を使用しています。

このあたりの雑草対策は、気温(水温、地温)の上昇と水田内のトロトロ層の発生、湛水条件など複雑な要因が絡み合う中での最適解を見出すことが重要かなと思っているところで、まだまだ技術不足感を否めません。来年以降も最重要課題であることは間違い無いです。

約15枚の田んぼの除草機で1周するうちに1週間が経過し、再び雑草が発芽しているということになります。この時間差を埋めるために、田植え時期を少しずつずらしたいと考えるようになり、そのため単一品種の作付けではなく、亀の尾、ササニシキ、コガネモチ、コシヒカリと生育速度(出穂速度)の異なる品種に分けて管理する作戦をとっています。

少し話が脱線しますが、今年からあきたこまちの作付けをやめることにしました。それは無肥料栽培での分蘖が確保できず、また出穂が周囲の田んぼよりも早くなるためカメムシ被害粒が多くなると考えているからです。周囲の田んぼの多くはあきたこまちが主流なので、これより遅く出穂する品種を選ぶことで、カメムシ防除につながると考えています。

条間の雑草は上記の通り機械的に除去できるとして、問題は、株と株の間(=株間)の除草ということになります。うちでは基本50株(〜60株)植えとしていますので、株間の間隔は15-20cmとなります。条間30cmに対して半分の隙間であるため、同じ機会を垂直方向に回転して使用することができません。もし株間も30cmとして坪36株植とするとタテヨコに除草機を使用することができるようになるのでもしかしたらもっと除草が楽になるかもしれませんが、うちの田植機に36株植えの設定が無いため、これを実現するには手植えでこのグリッドで植えるか、田植え機を最密の80株(70株)植えとして、半分の苗を捨てるか、36株植え設定のある田植え機を導入するか…。不耕起田植え機が廃車になった今後は、この辺りも一つの検討要素となりそうです。

で、現在のところこの株間の除草については、手で除去するしか方策がなく、もう10年ほど前のことになりますが、地域の母さんたちに手ほどきしていただいた手取り除草を「たそがれweeder」として採用しています。

たそがれweeder

これはもう果てしなくキツイ。中腰姿勢のまま50mをノンストップで進む先輩たちの姿を見て絶句しました。こんなこと自分にできるのだろうかと見よう見まねでこれまでも何度もトライしてきましたが、一人で1町5反を必要なタイミングでこなせる気が起こらず、いつも挫折してきました。局所的に対処できる部分のみの除草とかそういう理由を見つけて、いつもそこから逃れてきました。

でも、今年はちょっと気持ちが前向きなこともあったり、畑作業をキッチンファームとして自分の手から少し離すことができたので、思い切って手取りの全面除草を敢行することを考えてみました。

そう考えるのにも理由があります。このまま除草をせずに秋を迎えてもある程度稲は育ちお米は採れます。しかしながら、雑草の繁茂する水田の中には虫の種類も多く、風通しの悪さから徒長気味に育ち、いもち病菌の繁殖しやすい環境を生み、カメムシ被害粒を多くすることにつながります。より良い品質のお米を目指す上で、雑草除去は必須工程です。

そして、結局稲刈り直前には稲穂に潜ってヒエとりに汗を流さなければならない。

収穫直前のヒエとり

同じ労力をかけるなら、生育を助ける最高分蘖期を迎えるまでの除草を完了した方が全く意味があるし、秋の収穫前の重いヒエを運ばなくて良いと考えると、やはり出穂前までに全ての雑草を除去するのが最善だと思えるようになりました。

そこに鶴の一声。

ありがたいことに、たそがれ始まって以来の県立大生の協力の申し出をいただいたのです。

田口雄大君。現在大学を休学して、自分たちで農地を借りて営農の実践をしたり、社会の中に学び場を探して模索しているとのこと。そんな自分たちのことをyoutubeで発信もしています。そしてなんと「農家になりたい。」と涙が出そうなことを本気で考えているようです。この十数年、研究論文を書きたいのでヒアリングしたいという県大生はいましたが、それ以外はAIU生や秋大生がメインで、県大生との接点はほとんどゼロだったのですが、ここに来て有望な人材が現れました!

雄大は仙北市の出身で、なんとお母さんが自分と同じ歳だと言う。まじか。
真面目で熱心で野球部で鍛え上げた身体は、土に向かうことにきっとマッチングすると思う。そんな話を畑でしているうちに、仲間と一緒に取り組んでいると言う彼のつながりに期待してみたくなりました。

そもそも、田んぼの草取りなど今の若い世代には到底できないだろうと、半ば諦めていた内心に火を灯されたような心境で、もしかしたらと思い相談してみたところ、早速、AIUの友人を連れて来てくれた次の日には、大学の先輩、そして一緒に畑をやっている仲間を…。と1週間ほど進行した後、圧倒的な草の量に全く手応えがないまま1週間を2枚ぐらいしか進めないことで、次の手段を考えることにしました。

「ローカルクエスト」という地域が必要とする一次産業の実労働と体験を求める学生とをマッチングし、地域再生を手助けするようなサービスがあるという
https://media.gob-ip.net/2019/12/10/interview-localquest/

早速クエストに登録してもらって、翌週からはさらに広がる人材とともに草取り作業を繰り広げることになり… そこに僕の友人たちも加わり、延べにすると50名ほどの規模でこの難関を乗り越えることになりました。

クエスト週間終了後もまだ草取りが完了せずに、手取り3週間目は野育園のメンバーにもお願いを、そして4周目の最後は一人で臨みました。

最終的に一枚だけ、未完了田を残してしまいましたが、その他はほぼ8割から9割の除草を完了できたと思います。

出穂

クエストの対価としてはお金ではなく、たそがれの「お米と味噌」を。マッチング成立料としてはサービス提供者に1500円/1人を支払うというこのマッチングサービスは、この先もお世話になるかもしれない有益なものと感じました。

https://localquest.studio.design

そして、雄大たち自主的に手伝いに来てくれた僕の友人や学生さんたちには、春から考えてきたたそがれ発コミュニティ通貨Tassoでお支払いさせていただくことにしました。

Tassoについては次の記事に書きたいと思います。